【後編】お金や物を寄付する慈善活動は親切につながるのか

手のひらにガラス製の赤いハートが乗っている

前回は親切と慈善について考えてみました。

今回は後編。

慈善活動の中でも色々と誤解の多い「寄付による慈善活動」について、解説します。

この記事はこんな人にオススメです

・慈善活動なんて胡散臭いと思っている

・寄付は金持ちか有名人がやるものだから自分には関係ない

寄付による慈善活動に対する誤解

メリットの多い寄付による慈善活動ですが、デメリットもあります。

ただし、あらぬ誤解や批判を受けている面があり、まずはこちらについて言及したいと思います。

「寄付者は偽善者・売名行為」

慈善活動において寄付者の人格は重視すべきでしょうか。

もちろんお金そのものが非合法な手段、例えば盗難や詐欺によって得られた物であれば、被害者に返すのが第一です。

しかし法律の範囲であれば、どんな商売で得たお金であっても、誰が得たお金であっても、どんな目的であっても、使い道は自由です。

「団体は寄付金を不正に使用している」

そういう団体も過去にはありましたし、残念ながら今後も出てくるでしょう。

しかし全ての団体ではないです。

ほとんどは寄付者からの厳しい視線に晒されています。

「寄付金を効率的に使えていない」

「不祥事など問題がある」

と判断されると、次年度からの寄付が減ってしまいます。

団体そのものが消滅することさえ珍しくありません。

「慈善事業で利益をあげるなんてとんでもない」

一般に慈善事業は困っている人に少しでも多くの援助をしようとします。

その過程で利益をあげて、それを受け取る人がいるというのは、

「慈善事業を食い物にしている」

「大きな利益を得るなんてとんでもない」

など直感的に「おかしい」と感じる人もいるでしょう。

しかし効率的で効果的な運営をしようと考えれば、設備投資をしたり優秀なスタッフを雇ったりする必要があります。

慈善事業こそ利益をあげて、たくさんの困っている人に多くの支援ができた方がいいです。

現に日本の法律でもNPO法人や一般社団法人などの非営利法人は、組織の構成員に利益の分配を行うことは禁止されていますが、事業活動に利益を使うことは禁止されていません。

本当の問題点

前節で寄付による慈善活動への誤解について解説しました。

では慈善活動は素晴らしくて、何の問題もないのか。

残念ながら問題点はあります。

以下でご説明しましょう。

寄付者の親切さは向上しない

通常、寄付者はお金を出すだけです。

お金を出すのは素晴らしいことですが、活動そのものは行いません。

結果として親切をする能力が向上することはほとんどないのです。

なぜ親切さの向上が必要か。

それは親切さが多くの慈善活動で活用されているからです。

慈善活動をより効率的かつ効果的にしていくためにも、親切さへの理解はあった方がいい。

自分が出資している団体が、本当に困っている人の役に立てそうか、判断しやすくなります。

信頼できる団体を個人で探すのは大変

前提として、ほとんどの団体は法令違反やモラルに反することをしていません。

しかし悪いことをしていない=信頼できるではないでしょう。

お金を出すことに自分が納得できるか。

この場合の信頼とはそうした意味です。

例えば、

・自分が興味のある分野に支援をおこなっているか

・実績はどうか。また今後も大きな成果が期待できそうか

・収支の報告は納得できるか

・運営者は適正な報酬を得ているか。過小もしくは過剰な報酬を得ていないか

などのポイントを確認することになります。

これだけでも大変なのですが、さらに言えば、

・実績をどう測定するか

・今後の成績をどう予測するか

・収支報告の納得とは具体的にどのような基準を満たすものか

・適正な報酬の「適正」とはどのような水準か

というようなことも全て確認しなければなりません。

要するに「信頼できる団体を個人で探すのは大変」ということです。

役立っている実感が持ちにくい

慈善活動において、寄付している人はお金を出せばいいです。

しかし、それだけでは世の中に貢献しているという実感が持てません。

そこで、この点を改善するために慈善団体では、

・報告書の作成

・支援を受けている人たちに手紙を書いてもらう

・オンラインチャット

・交流イベント

などを行っています。

もちろんこれらの効果は少なくありません。

手紙を受け取って「支援していて良かった」と心から思う人もいます。

ただ残念ながら直接行う場合と比べると、役立っている実感を得にくいようです。

相手の表情や声の感じ、何よりも「自分がやった」という感覚がないので仕方のないことではあります。

本当に優れた団体が成長しにくい

慈善団体への誤解の一つに「利益を出すなんてとんでもない」というものがありました。

そんな非難を受けるのであれば、多くの慈善団体はどうしても細々と活動せざるを得なくなります。

個人や企業からの寄付金をあまりもらわず、助成金や手弁当、他の事業収益などでなんとか運営する。

もっと多くのお金が使えたら、優秀な人をたくさん雇って、高性能な設備を使って効率よく活動を行えるにも関わらずです。

これでは本当に優れた団体が成長しにくく、結果として多くの人たちに支援が行き渡らない状況を生み出してしまいます。

ただ最近では医療や福祉をはじめとして従来の慈善事業に近い領域での企業進出が進んでいますので変化が起きていくかもしれませんね。

注意点

ここまで読んでいただいた方の中には、

「親切も大事だけど、慈善活動も大事」

「寄付やボランティアを積極的にしよう」

と思った方もいるかもしれません。

そんな優しい方へ2点注意してほしいことがあります。

困った人の支援は民間と政府で協力する問題

ここまで民間のことばかり書いてきましたが、社会保障のメインは政府です。

整ったインフラ、治安のよさ、国民皆保険、いざという時の生活保護。

これらがカバーできない部分を民間の慈善団体が補っています。

そんな強力なパワーの源は、あなたの収めている税金です。

つまり、日本国民であればほとんどの人はすでに十分に負担をしています。

慈善活動は無理のない範囲で

すでに負担していると言っても、困っている人を助けたいという方もいるでしょう。

そういう方へお伝えしたいのは、

「無理のない範囲で慈善活動をしてください」

ということです。

なぜなら一番大切なのは自分自身だからです。

よほど切羽詰まった状態は別として、あらゆる活動のリソースは自分になります。

自分に力がなければ、大切な人やモノを守ることができません。

ちなみに色々書いていますが、私も継続的な寄付やボランティアは行っていないです。

親切も含め、自分のできる範囲で時々やっています。

まとめ

・寄付による慈善活動は人の役に立つ

・資本力は政府がメイン。民間はその補助。ただし役割はどちらも必要

・正しく理解して、無理のない範囲で参加を検討しよう

ではまた!

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